ライラックをあなたに…
「部長」
「何だね?」
「ご心配には及びません」
「え?」
「彼に危害を加えたりするつもりはありませんし、勿論、結婚の邪魔をするつもりもありませんから」
「……………本当に申し訳ない」
部長は深々と頭を下げた。
きっと、会社の社運もかかっているのだろう。
それ程に、相手は大物だという事。
私なんて、ジタバタするだけ無駄なんだ。
「頭を上げて下さい」
部長の腕にそっと手を当て、溜息を零す。
この会社の人間は、全て彼の味方。
私の事を案じてる人なんて誰一人いない。
私は悔しくて唇を噛み締めた。
すると、
「何か、私に出来る事は無いかね?」
「へっ?」
「転職先の紹介でも、新居の世話でも、何でも力になるから……」
「…………」
申し訳なさそうに口にする部長。
きっと、これが私に与えられる最後の報酬なのかもしれない。
5年もの長い年月を過ごした私への………。
私は瞼を閉じて深呼吸した。
そして―――――。