ライラックをあなたに…
「よく頑張ったね」
「ッ!!」
俺は、今にも涙を零しそうな彼女の頭を優しく撫でた。
年下の俺が言うべき言葉で無い事ぐらい重々承知している。
それでも、彼女の心に寄り添いたかった。
本音を言えば、強く抱きしめたい衝動に駆られたが、今すべきでは無いと判断した。
そして、ゆっくり顔を上げた彼女は大きく深呼吸し、そして、初めて見る輝いた笑顔を見せた。
「一颯くん」
「ん?」
「ありがとうね」
「………どう致しまして」
「もう大丈夫」
「え?」
「私、綺麗サッパリ吹っ切ったから」
彼女の言葉の真意は、その瞳からも窺える。
本当に吹っ切ったに違いないと。
そんな彼女を目にして、俺も自然と笑みが零れた。
俺に助けを求める事はせず、彼女は自分の力で乗り越えようとしている。
そんな彼女が眩しく見えた。
女性はこうと決めたら意志は固いと言うが、彼女を見ていると本当にそう思えた。