ライラックをあなたに…
大好きなインテリアデザインの仕事がしたくて、本当にがむしゃらに勉強し、やっと手にしたコーディネーターの資格。
しかも、幸運な事に第一志望の大手ハウスメーカーに見事就職を果たしたのが5年前。
右も左も分からなかった私が、毎日必死に働いて、そしてそんな私をずっと見守ってくれていた最愛の人。
人生の運を全て使い果たしたと思うくらい、毎日が倖せで。
建築業界でも有名な彼は頭脳は勿論の事、容姿は完璧だし性格も優しくて、文句のつけようが無いくらいの素敵な恋人だった。
そんな彼が豹変したように別れを告げたのが1か月前。
本当なら今日は、私とあの人の『結婚式』の筈だった。
私は一颯くん宅のテラスで昼過ぎの心地いい風を感じながら、どこまでも澄み渡る青空をボーっと眺めていた。
「寿々さ~ん、何か飲む~?」
「う~ん、ちょーだーい」
リビングの掃出し窓から顔をひょこっと出して、一颯くんが声を掛けて来た。
今日は土曜日。
大学は休みで、バイトは夕方からあるらしい。
私は会社を辞め、平日は週3日のスクーリングに通い、後はこの一颯くん宅で勉強して過ごしている。