ライラックをあなたに…
蒼穹に流れゆく雲を眺め、自分の人生を憂いでいると……。
「はい、寿々さん」
「ん、ありがと」
コトンと音を立て、テーブルにカップが置かれた。
白い湯気を纏った爽やかな香り。
彼が淹れてくれるハーブティーは絶品なのだ。
長椅子の上に足を放り出していた私は、その足を折りたたむように膝を抱え、そして彼の淹れてくれたカップを手に取った。
淹れたての柔らかい温かみは、冷え切った私の心にはちょうどいい。
両手で包み込むようにしてカップを持ち、顔を近づける。
すっかり馴染んだマグカップ。
彼が買ってくれたそのマグカップは、今では特効薬のような働きをしている。
ううん、違うな。
マグカップではなく、その中に込められた彼の優しさに少しずつ傷が癒されているんだ。
フゥ~と吹きかける息で波立つハーブティー。
そこに浮かぶ自分の顔を見つめていると……。
「んッ?!」
いつもなら、テーブルを挟んだ向こう側の椅子に腰かける彼が、今日は私の隣りに腰を下ろした。
急に距離を失い、トンと肩が触れ合う。
「何か、考え事でもしてたの?」