ライラックをあなたに…


鋭い彼の問い掛けに、体裁のいい言葉が見当たらない。


過去を掘り返したくないと思うと同時に、これからの事が不安で堪らない。

頑張って前を向いて生きて行くと決めたとはいえ、明確なプランがある訳じゃ無い。


こうして、無理やり居候させて貰いながら、本当は現実から逃げたいだけなのかもしれない。

……彼が優しくて、お人好しな性格だと知った上で、彼に甘えている事は重々承知している。


でも、今はまだ、勇気が出足りないんだ。


頑張るとは決めたものの、どうやって、いつまで……そんな抽象的な事が私を容赦なく追いつめるから。

だから、もう少しだけ……もう少しだけ見守って欲しいと、我が儘にもそう思ってしまっている。



「ごめんね、一颯くん」

「ん?質問の答えになってないよ?」

「………私、頑張るから……」

「……………無理しないでね」


噛み合わない会話も、いつもいつも彼の言葉で纏まってしまう。

私の心を見透かしている彼は、必ず私が欲しい言葉を掛けてくれるんだ。

……いつだって。



俯き加減の視線を横に移すと、気持ち良さそうに目を瞑る彼の横顔が視線に留まる。

同じように目を閉じて、心地良い風を肌で感じていると。


「今日の晩御飯、何?」

「へ?」


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