ライラックをあなたに…
私はリビングのソファに座り込んだ。
すると、途端に震え出す身体。
時間差で襲って来た後遺症。
心の枷を取り除いた事で現れ出した不安という目に見えない敵。
これから、どうしよう。
気持ちの整理を図った筈なのに、虚無感に襲われている。
彼と別れて割り切っていたと思っていたけれど、実際はそうでは無かった。
彼からお金を受取る事を拒絶し、実家にも帰らず、漠然と過ごしている。
『カフェを開きたい』という夢の為に、少しずつ勉強を始めてはみたが、結局何もかも中途半端。
週3日というスクーリングの他は、この部屋でゴロゴロしながら課題をするだけで、他には何も行動に移していない。
私は徐に室内を見回した。
視界に入る全ての物が、『本間一颯』という人物が実直な人間だと証明しているように感じた。
きちんと整理整頓された本棚。
手入れの行き届いている観葉植物。
机の上に置かれているファイルの数々。
まるで自分とは住む世界が違うんだと言われているみたいに感じた。
結局私は、自分自身を悲観して、憐れんで……。
そして、頑張っている風を装っているだけだった。