ライラックをあなたに…
お互いに無言のまま。
彼は私をじっと見据え、私の言葉を待っている。
私は彼がじっと見つめる中。
ゆっくりと味わうようにハーブティーを口にする。
―――――この味を決して、忘れない。
私は瞼を閉じて彼の優しさを一滴も残さず戴いた。
確かめるようにカップの中を見つめ、胸を撫で下ろす。
大丈夫、ちゃんと出来てる。
彼の気持ちは全部受取れた。
私は優しい笑みを浮かべながら、彼の前にコトンとカップを置いた。
「ハーブティー、ありがとう」
私の瞳からゆっくりと視線を落とす彼。
勿論、その先は今置いたカップへと注がれる。
そして、一点を見つめ彼は安堵したのか、頬を綻ばせた。
「一颯くんの気持ちは、ちゃんと受け取ったよ」
「え?」
「ライラックをあなたに……っていう一颯くんの気持ち」
「ッ!!」
一颯くんは私の言葉で急に恥ずかしくなったのか、口元を覆うマフラーで顔を殆ど隠してしまった。
そんな風に照れられると、私まで恥ずかしくなるじゃない。