ライラックをあなたに…
俺の言葉で一瞬で凍りつく彼女。
脅すつもりはないが、これ以上、傷ついて欲しくない。
そう思ってしまうのは、俺の我が儘なのだろうか。
そんな彼女を見据え、思いがけないアイデアが浮かんだ。
「寿々さん!!」
「ん?」
「ちょっと気晴らしに、居酒屋でバイトしてみない?」
「へ?」
「ちょうど年度末で忙しい時期だし、バイトの子が2人も辞めて人手不足なんだよね?」
「えっ、でも……」
「こう見えて、俺、結構信頼されてるし。一応、バイトリーダーだからね」
国立の法学部で1年間勉強し、農大を受験した。
元々、親に勧められた法学部に渋々入学したものの、俺の中でしっくり来ないものがあった。
法学部がどうこうではなく、俺の性格が合わないと思ったんだ。
法律は白黒はっきりさせるようなもので、知識として得るのはいいが、仕事としては俺には向かないと思った。
そんなモヤモヤの生活をしていた時、友人に誘われ、ボランティアでガーデンフェスティバルに参加した。
そして、そこで『樹木医』という職業に運命的に出会った。