ライラックをあなたに…


 *◇*◇*◇*◇*◇*


ソファの上で膝を抱え、何かから怯えるようにカップの中を覗いている。


彼女が抱える数々の問題。


それは恐らく、俺の想像を超えるほどのものだろう。


だって、男にフラれたくらいで『死』を選ぶだろうか?


ヤケ酒に逃げたくなる気持ちは理解出来るが、それにしたって……。




午後4時を回ろうとしている。

このまま、この部屋に彼女を1人にしておいて大丈夫だろうか?


俺のいない間に、また自殺でもしたら……。



4時半からのバイトだが、中々腰が上がらない。


今にもこの世から消えてしまいそうな彼女を放っておいて、バイトに行ける訳がない。

かと言って、繁忙期な上、急に休むのもどうかと思うし。


さて、どうしたものか。



「一颯くん、バイト行かなくていいの?」

「ん?……ん~」

「私なら大丈夫よ?そろそろ家に帰ろうかと思うし」

「帰るって……彼がいるかもしれない家に?」

「ッ?!」



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