ライラックをあなたに…


23時を過ぎた頃。


「寿々さん、お疲れ様です」

「………ホントに疲れたよ~」



殆どのお客さんが帰った後の店内で、一颯くんから冷えた烏龍茶を受取った。

それを一口口にした私は思わず本音を呟いていた。



「すみません。でも、凄く助かりました。……ね?大将」

「あぁ、本当に助かったよ。ありがとうな、寿々ちゃん」

「いえ、私は別に……」



お客さんが少なくなった事もあり、他のバイトの子達は上がったらしい。


少し静かになった店内に自分の声が響いていた。



「一颯、何か食べるか?」

「あっ、はい。寿々さんは?何か貰う?」

「えっ?」

「お腹空かない?夕飯食べ損ねたじゃん」

「あっ………そう言えば、そうだね」



昨日の今日で脳は勿論の事、身体までおかしくなったらしい。

お店に入るまでは頭がズキズキしてたのに、緊張とあまりの忙しさで二日酔いだった事さえ忘れていた。


今考えると、私相当お酒臭いよね?

シャワーを浴びたからって、そう簡単に抜ける筈が無い。


ここが居酒屋で良かったと心から思った。


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