なんで俺じゃあかんねん
「へぇ。弟か~。
坂井さん、弟おったんや~。
お姉さんおるんは知っとったけど。」
真田先輩は、笑顔のまま話を続けている。
きっと、息苦しく思っているのは俺だけ。
あっちは何とも思ってない。
「紫の、ことですか?」
「そうそう。坂井先輩は、俺が入学したとき生徒会長してたから。
それを坂井さんに言ったら、なんか自慢げやったわ。
あの人、お姉さん好きやろ?」
「そうですね。
姉ちゃんのこと、めっちゃ好きやと思います。」
だから、姉ちゃんが大学行くってなって一人暮らしはじめるとき
本気で引き留めてた。
たぶん、一人暮らし始めるのが俺なら、笑顔で手を振るやろう。
「やろ!?やんな~。」
なにがそんなにおかしいのか、真田先輩はずっと笑っている。
その笑顔を見ていると、葵に対して好意的なのは丸わかりで苛々した。
「あの、先輩らバスケ部なんですか?」
話題を変えたくて、思いついたことを言ってみる。
「せやで。なに?入ってくれるん?」
「はい。俺、中学ん時バスケ部やったんで。」
「そうなんや!」
相変わらずへらへらしている。
なんやろ、この感じ。
なんか、見下されたような感覚。
いや、全然見下してないんやけど、なんか悔しい。