なんで俺じゃあかんねん
「いやん!ハル、めっちゃ似合うやん。
電車で見る先輩たちより似合ってんで?」
入学式のために仕事を休んでくれた母さんは
すっげえめかしこんで俺の登場を待っていたようだ。
サイズ合わせ以来初めて高校の制服を着た俺を見て興奮している。
「母さんこそ、気合入ってんな・・・。」
いつもワンピースなんて着ないくせに。
化粧も、なんかばっちりやし。
「あ、わかる!?
入学式とか、そういう式ってつくやつはな、母さんたちの戦場や。
だれが一番"有閑マダム感"を漂わせられるか・・・」
鼻息荒くガッツポーズをしている。
有閑マダムって、うちは別に金持ちちがうのに。
「それより、ホンマ似合ってんで?
和也さんにそっくりで、ハルはホンマにイケメンやなぁ。」
「まあ、葵たちとは比べ物にならんくらいにはな。」
言っちゃ悪いけど、葵や姉ちゃんは普通やからな。母さんも。
でも俺は、中学ん時も間違えなく一番モテてたくらいの顔立ちだ。
葵の友達、つまり先輩からも何人も告られたし。
それで、葵を使って俺に近づこうとする先輩もいたみたいで、
それもあって葵は余計に俺が嫌いになったんやろうけど。
全く、余計なことしやがって。
てか、それで俺が嫌われるのはトバッチリやと思うねんけど。