あたしの知らないあたしを写して。
 
けれど、モデルを引き受けたものの経験もなく、第一、そんな大事な写真に撮られるほどあたしはプレッシャーに強くはない。

あたしの表情一つで写真が良くもなり悪くもなる、そう思うと顔の筋肉だって引きつってしまう。


「いつも誠にしてるみたいに笑えばいいんだよ。ここに誠がいると思って笑ってみて」

「は、はい…」


それならなぜモデルの指名を受けたのか――答えは簡単だった。

篠崎さんだったから。

彼には黙っているけど、誠とあたしの関係はかなり冷めきったもので、体の関係ももうない。

あたしが篠崎さんに密かに憧れていることを誠は薄々感じていたのだろう、あるときから急に篠崎さんの話題を避けるようになった。

だから、誠の名前を出されても、あたしはうまく笑えない。
 

< 2 / 3 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop