贖銅(ぞくどう)の刑
牢獄箱
次の日の昼過ぎ。帰る場所もなく、マンガ喫茶を寝床とした千歳のケータイに、実から電話があった。

-すぐ来てくれ。俺は今、脱力感一杯で動けない…

行き方は説明するから、早く…-

実に呼び出されるまま千歳は、二日酔いの頭痛を我慢しながら、電話で説明された通り、実の家まで来た。

「…ここが、実君の家!?

初めて来たけれど…

大きな、門構え…」

ちなみに、実の家は戦前、多くの小作人と使用人を抱えた、大地主の旧家であったが、今は戦後の農地改革のあおりを受けて没落し、今はその家だけがその時の名残として残されているのみであった。

「ところで、何の用事だろう。

電話にでた時の実君、何かいつもと様子が違っていたけれど…」

-何かあったのかしら。声が少し、暗かった…-

千歳は、少し気負い気味に、そろっと門をくぐった。




「よく来たな…さあ、こっちの座敷に。」

「あ、う、うん。

…そ、それにしても大きな家ね。

わ、私、びっくりしちゃった…」

門をくぐり、大きな庭を進みようやく玄関にたどり着いた千歳は、真に素直な感想をもらすと、実に言われるまま、座敷の方へと向かった。
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