。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
進藤先輩が嫌がる千里を無理やり反対方向に引っ張っていって、あたしは響輔さんと二人で並んで帰ることに…
少しの距離を開けて、あたしの歩調に合わせながらゆっくり歩く響輔さん。
ち、近い……
いや、今までだってこの距離だったし、今更だけど。
でも…
二人きりで歩くのはまだ慣れなくて、あたしの心臓はバクバク音を立てている。
…心臓の音……聞こえそう。
まともに響輔さんの顔を見られなくて、俯きながらのろのろ歩いていると
「あ…すみません。歩くの早かったですか?」
と響輔さんが聞いてきた。
「い、いえ!大丈夫です!」
慌てて手を振ると、
ふわっ
急に肩を抱かれて引き寄せられた。
響輔さんの香り…優しい柔軟剤とちょっと柑橘系の爽やかな…
なんてゆっくり感じてる場合じゃないって!
へ!?
慌てて顔を上げると、響輔さんはあたしの肩を抱き寄せたまま道行く中年のサラリーマン二人組みの行方をじっと見ている。
「酔っ払いみたいですね」
響輔さんの言葉にその中年のおじさんを振り返ると、確かに足取りも怪しくすれ違う大学生っぽい女の子の二人組みに声を掛けていた。
「おねーさん可愛いねぇ。一杯やり直さない??」
「えーやだぁ」
お姉さんたちは苦笑いで立ち去り、フられた酔っ払いたちはまたも千鳥足で歩き始めた。
「…すみません、いきなり」
響輔さんが慌てて手を離し、またもあたしとちょっとだけ距離を開けた。
響輔さんはあたしが絡まれないように助けてくれたんだ。
響輔さんの香りが遠ざかっていく…
「あ、あの!」
あたしは少し開いた距離を歩く響輔さんに思い切って声を掛けた。