抹茶モンブラン
 しんと冷えたダイニングで、私は暖房もつけず椅子の上で丸くなっていた。
 夕飯も作り掛で放り出してあり、着替えもしないままずっと私はそうしていた。
 光一さんに電話をしてしまった事も、頭の中でややボンヤリとしていて、本当に彼が来てくれるのかという不安があった。

 こんな衝動的な行動に出るなんて、私らしくない。

 ううん、でもこれが本当の私なのかも。

 弱い部分を隠して生きるのは癖だったけれど、光一さんを誰かにとられるぐらいなら、私は彼に幻滅されても本心をぶつけなければ……と思った。
 そんなに高くもないプライドだって全て捨てていい。

 私はやっぱり、あの不器用で子供っぽさを残した彼を愛しているんだ。

 いつでも引き返せる距離にいようと無意識に心をセーブしていたけれど、本能に働きかける彼の魅力はすでに私の心を捕らえていた。
 だからこそ、俊哉に会っても私は冷静でいられた。
 私の握るべき手はあの人ではないという事が瞬時に分かったのかな。
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