抹茶モンブラン
「何度もいらしてくださってありがとうございます」

 足以外はすっかり元気になった鮎川さんがベッドに上半身を起こしてそう言った。
 個室に一人寝ている鮎川さんのベッドサイドには綺麗な花が活けてある。

「綺麗ですね」

 ピンク色のバラが、何だか彼女に元気を与えるように綺麗に咲き誇っている。

「ええ、私はバラが好きで。精神的に寂しいだろうからって堤さんが時々買ってきてくださるんです」
「そうですか」

 週1ペースに数時間ほどしか光一さんと会っていないけれど、彼がマメに花まで持って見舞いに来ている事を知るのは、やはり胸が痛い。

「あの……乙川さん」

 鮎川さんの瞳が真剣なものになった。

「なんですか?」

 ベッドの横にあった小さな丸い椅子に座り、私はなるべく落ち着いた態度で彼女の言葉を待った。

「私……もしかして歩けなくなるかもしれないって言われているんです」
「でも、リハビリをすれば…………」

 私はそう言いかけたけれど、何だか勝手な言い方だなと思って言葉を切った。
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