抹茶モンブラン
「鮎川さんはあなたを異性として愛してるの。あなた無しでは一日も生きていられないほど、あなたを愛してる。その強さは私も同じだけれど……やはり光一さんを彼女から
奪うなんて出来なくて……」

 ごまかしは止めて、私は正直な気持ちをあえて冷静に伝えた。

 光一さんは、やっぱり鮎川さんの本心に気付いてなかったようで、かなり驚いた顔をした。

「紗枝が……?彼女がそう言ったの?」

 私はその質問に軽く頷いてみせた。

「……」

 光一さんもショックだったみたいで、黙っている。
 私以上に、彼は鮎川さんの心を無視する事は出来ないはずだ。

 私達は二人とも寒い夜風に当たりながら、沈黙した。
 アパートに彼を入れてしまったら、自制を利かせる自信が無かった。
 だから私は、あえて外で会話をしていた。

 そんな私の意志をくみとったように、光一さんは私の体をそっと離した。
 数センチ離れたただけの体だったけれど、私にとってはもう永遠に手の届かない距離に彼が行ってしまったような感じがした。
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