理想の男~Magic of Love~
「私、知らなかった」

藤の手を弄びながら、私は言った。

「こんなにも近くに私を思っている人がいたなんて、知らなかった」

私は、何にも知らなかった。

「なのに、私…」

言いかけた私を、
「愛莉」

藤が呼んで、もう片方の手で私の頬に触れた。

同時に、額に温かくて柔らかい感触を藤はくれた。

「俺は今、幸せなんだ」

唇で私の額に触れた後、藤が言った。

「愛莉が俺を知りたいと言ったこと。

愛莉が俺を好きになってくれたこと。

叶わなかった願いが叶って、嬉しいんだ」

そう言った後、藤は微笑んだ。
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