理想の男~Magic of Love~
ショックとか悲しいとかって言う、そんな理由じゃない。

そんな理由で、泣いているんじゃない。

これ以上走ると、頭がおかしくなりそうだった。

何より、もう足が痛くて限界だ。

これ以上走るのもつらくて苦しいから、立ち止まった。

「――もう…走るんじゃ、なかった…」

その場で立ち止まった瞬間、ゴホゴホと咳き込んだ。

苦しい…。

苦しい…。

苦しい…。

胸が苦しくて、うまく呼吸ができない。

痛い…。

痛い…。

足じゃなくて、胸が痛い。

胸が痛い…。

痛い…。

「――痛いよう…!」

かすれた声で、泣き叫んだ。

さっきからずっと、涙が止まらない。
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