【B】星のない夜 ~戻らない恋~

41.秘密の結婚式 - 葵桜秋 -



咲空良として瑠璃垣の屋敷に入った私。



葵桜秋ではなく、都城咲空良としてこの先の未来を歩く。
それは葵桜秋としての私との決別。



葵桜秋としての持ち物は全て実家に置いてきた。


初めて踏み入れた、瑠璃垣の屋敷。
咲空良が生活していた空間。



それは新鮮で、久々にスリルを感じられる時間だった。



「お帰りなさいませ。
 咲空良さま、ご実家はいかがでしたか?」



名前も知らない初対面の相手にそう言って近づいてこられた時には内心焦ったけど、
その辺りは事情を知っていそうな木下と呼ばれる存在がフォローしてくれた。


何処に行けばわからない部屋も、
木下がリードするように誘導してくれる。


部屋に入った後、一通り部屋の間取りと
使用人たちの名前を紹介してくれた。




葵桜秋の名を捨て、咲空良として瑠璃垣のお屋敷に入った私。




だけど怜皇様は、姿を見せなかった。




怜皇様が姿を見せたのは、私が邸に入ることが決まった当日。

エントランスの前で擦れ違っただけ。




出張・出張・出張。



咲空良が記入していた怜皇様の予定表には、
帰らない日々ばかり記載されている。





翌日から、本当に妊娠しているのかを調べようとしているのか
私は怜皇様のお養母さまの実家が管理している総合病院へと連れられる。




その病院の産婦人科で、本当に妊娠していることを瑠璃垣側も知ると
それからは、対応が一気に変わっていった。



瑠璃垣側の対応がかわっても、現実が変わることはない。



怜皇様が帰宅しない邸。




一人残された部屋。

咲空良のクローゼットを開けたり、鏡台を開けて何処に何があるかを
チェックしていく。


双子とはいえ、洋服の趣味は微かに違う。


甘いテイストの咲空良の服とフェミニンテイストの私の服。


咲空良のファッションセンスは勘弁して欲しいな。


そう思う私と、咲空良は何も家から持って出ていなかったのだから、
この洋服は全て怜皇さまから貢がれたものだとしたら、
そう言うファッションも有りなのかも知れないと思ってみたり。




怜皇様がようやく姿を見せたのは、
結婚式を二週間に控えた夜。


連絡もなしに突然現れて、そのまま着替えるように告げられて
連れられた先は、どこかの豪邸。


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