【B】星のない夜 ~戻らない恋~

親友の家……。
彼女の親友は、多分睦樹の彼女だろう


睦樹にも言われている手前、好きにさせておくのがいいだろう。

外の世界が恋しくて、婚約を破棄すると言い出すならば、
それも悪くない。



「好きにしろ。
 知可子、咲空良の望むようにハイヤーを手配しろ。
 
 東堂、今日のスケジュールを」



それだけ告げると、俺はそのまま到着した車へと乗り込んで出社した。



それから二日後の夕方、睦樹からの電話が着信を告げる。



「どうした?」

「今夜、都合つけられるか?
 話したいことがある」


睦樹からの連絡を受けて、19時以降ならば可能だと告げる。


出張先から最寄駅きで帰宅して、そのまま車でアイツのマンションに到着したのが
20時前。

チャイムを鳴らして、到着を告げると玄関には女性の靴。


……なんだ彼女が来てるのか……。



邪魔しちゃ悪いな。



そんなことを思っていると、睦樹が「中に入れよ」っと
部屋の中に招き入れた。



「腹、減ってるだろ」



睦樹がテーブルの上に所狭しと並べられた家庭料理の傍で言う。

3人分の食器が支度されているテーブル。



肉じゃがや唐揚げ、サラダをはじめとする気取らない家庭料理が温もりを演出する。




「心【しずか】、俺の親友で瑠璃垣怜皇。
 怜皇、こっちは俺の婚約者になった廣瀬心【ひろせ しずか】。

 昨日、プロポーズして結婚することに決めたよ。
 心【しずか】の腹の中に、俺たちの子供がいるのがわかったんだ。

 廣瀬社長にも正式に許可を貰った。
 今日は、お前にもそれを伝えたくて逢いたかったんだ。

 親友として、祝福してくれるだろ」



そうやって嬉しそうに報告する睦樹。


心【こころ】さんのお腹には二人の子供がすでにいる。
突然の睦樹の結婚宣言に、俺はある意味驚く。


何時かは結婚するだろうと思っていたが、
その決断があまりにも早すぎて。


お腹の子供が運命を狂わせたのか、
お腹の子供を覗いても、こうなる運命に導かれていたのか
今の俺にはわからない。




「どうぞ。

 瑠璃垣さんのお口にあうかどうかはわからないけど、
 睦樹さんに、一般的な家庭料理を作ってやってくれって
 言われたから」



そう言いながら、睦樹と俺のグラスに注がれるビール。

自分のグラスにはベットボトルに入ったお水を注いで、
笑顔を見せる。


三人で乾杯するひと時。





瑠璃垣の家に入った時から、
いつも家ではテーブルマナーの練習を兼ねた
食事ばかりがテーブルに並んでいた。



外に出ても瑠璃垣の後継者として恥ずかしくない作法。



俺にとって俺自身よりも『瑠璃垣の後継者』としての
眼鏡が重要視される現実。 




「こんなに美味しい晩御飯は久しぶりだよ」



小皿に少しずつ、肉じゃがや、サラダ、唐揚げなどを取りわけて
箸を進めながら『美味しい』と思えた自分自身を楽しむ。

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