【B】星のない夜 ~戻らない恋~

18.最初の贈り物 -怜皇-


仕事中の俺の元に突如、彼女から連絡が入った。

俺の連絡先を知らない彼女は、
ハイヤーの運転手経由で藤堂の携帯を呼び、
俺へと連絡を繋げた。



「怜皇様、咲空良様からお電話が入っています」


藤堂が携帯電話を俺に手渡す。


「もしもし」

保留ボタンを解除して短く告げる。

「あのっ……咲空良です」

「あぁ、東堂から聞いて知っている。
 電話までして何の用だと言っている」

「連日、好きなことをさせてくださって有難うございます。

 もし宜しければ、屋敷の外で怜皇様とゆっくり過ごしたいのですが
 わがままですか?

 瑠璃垣のお屋敷は私にはまだ息が詰まるばかりで……」
 

電話の向こう、少し俺に怯えながらも
声を振り絞って、必死にここ数日の息抜きのお礼を兼ねての
連絡のようだった。


その連絡の後に、付け足された言葉。



君は俺を嫌っているのではないのか?

外で出逢いたい?
瑠璃垣の家が窮屈すぎる?



続けられた言葉に俺自身が感じる、
瑠璃垣の窮屈さを思いだした。



「クリスタルホテルに行っておけ。
 仕事が終わり次第向かう。

 ホテルには伝えておく。

 用件はそれだけか?」

「はい……」



彼女の頷きをきいて、そのまま電話を終わらせる。



「東堂、電話を頼む。
 後、クリスタルホテルに連絡を。

 今宵は咲空良と一泊する」


驚いたような表情を見せた東堂をその場に残して
俺はその後の仕事を続けた。


会議の後、会社を後にして夜は打ち合わせを兼ねた会食へとこ
出掛けてホテルに入ったのは、22時近くになる頃だった。



ホテルまで俺を送り届けた後、藤堂は明日の予定を告げて帰宅した。



「怜皇様、咲空良様がお待ちです」

「あぁ、今から部屋にあがる」



そのまま奥の専用エレベーターから最上階へと入る。


最上階に用意されてある四部屋の中、
俺用に与えられた部屋のドアの前に立つ。


チャイムを鳴らすと奥から、
彼女が姿を見せた。


久しぶりに逢った彼女は、行きつけの美容室で髪を切ったのか
この間あった時よりも雰囲気が違っていた。

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