泣いていたのは、僕だった。~零~



捜索して一時間は経っただろうか。

宛のない捜索は意味をなさない。

当然優樹菜を見つけることが出来ず、一旦家に戻ることにした。



もしかしたら帰っているかもしれない。


帰ったら遅いっと玄関で出迎えてくれるかもしれない。



淡い期待を胸に歩み始めたとき、携帯が鳴った。



嫌な予感がした。


この電話をとったら、地獄を見るようで…


でもきっと、出ないと後悔する。



ディスプレイには探し人の名前。


「もしもし!?優樹菜?今どこに――」
『………ま』
「え?」



電話越しの声は息荒く、何を言っているのか分からない。


それでも何かを伝えようとしているのは分かった。



『………やま、……りょ、して』
「子山が横領していたって言いたいんだね?」
『………め、ね………』



声が震えている。
泣いているんだろう。



「優樹菜?」
『ごめ、ね……じめ………の幸せ……………かな、て……あげ……………られ、なくて』
「何言ってるんだ!?優樹菜、今どこにいる?優樹菜!!」
『………………………』



向こうから声が聞こえてくることはなかった。



彼女が発見されたのは、その三時間後。


体を数十カ所刺されていた。


触れた頬は、冷たかった。


それは今、僕自身が生きているんだと実感させた。




“ごめんね。創の幸せ、叶えてあげられなくて。”



それは僕の台詞だよ。


僕と君が居ればあの世でも幸せになれる。



でも少しだけ待っていて。



僕が逝くまで少しだけ待っていて。



アイツだけこの世で幸せになるなんて許せないんだ。


アイツを、子山を地獄に引きずり落としたら、今度こそ二人で幸せになろう。





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