音匣マリア
年明けからは公私ともに目が回るような忙しさだった。


契約してくれた2軒のお宅を夜遅くに訪問して、具体的な挙式の為の打ち合わせをしたり、衣装合わせに追われたり。


花嫁さん達のエステも、スケジュールを組んで手配した。



私生活では蓮が何度もうちに来て、お父さんに頭を下げ続けて、ようやく入籍の許可を取り付けた。

お父さんいわく「もう式はやらんでいい。挙げたいなら二人でやってくれ」って、辟易しながらも拗ねていた。

「そんなに何度も見るもんじゃないでしょ」と、お母さんも苦笑い。


うちの家族に関しては、それで万事が上手くいった。


蓮のご両親にはありがたいことに最初から異存はなかったらしくて、逆に皆から祝福されてしまった。


それから両家で顔合わせ。

そして結納。からの、入籍。


本当に慌ただしく1月2月が過ぎていった。







―――そして3月。


私と蓮は、蓮のマンションで同居…ううん、新婚生活を始める事に。


お互い仕事の時間がズレてるから、仕事をしている日は顔すら合わせられない日もあるけど、今ではそんなのは障害にすら感じない。


それも、大事なお客様の吉田さんご夫婦のおかげ。


その吉田さんご夫婦は、6月に挙式を控えている。


ああいう睦まじい仲の夫婦になれたらいいな…なんて、早苗さんを見習って、なるべくいつも蓮の前では笑うように心掛けている。



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