音匣マリア
今から乗るあの観覧車に纏わるジンクスは、いつ、誰に、教わったんだっけかな?


確か短大生の時の友達か、或いは雑誌に紹介されていたのを読んだかしたんだよね。


他の観覧車じゃ駄目、この観覧車だけに伝わる恋愛が成就するというおまじない。


乗るときに条件が揃ってたら、必ず恋愛が上手くいくっていう噂の観覧車がこれ。



蓮さんはその《ジンクス》を知っているのかな?


こんなこと恥ずかしくて、あからさまには聞きづらいよ。



蓮さんと一緒に映画を観たり遊んだり、手を繋いだりして気がついた。



私も、蓮さんを意識し始めてるって。



今までの彼氏達と同列じゃなく、多分これからもっと好きになりそうな、そんな予感。



ヨッシーは蓮さんが私に特別な感情を持ってるってこの前は言ってたけど、実際今日は二人でデートみたいなことしてみて、どう思ったのかな?私のことを。


可愛いげが無さすぎて幻滅されたりしてないかな?

ダーツやビリヤードなんかで遊びなれてないから、子供っぽく思われてたらどうしよう。


前の私はこんなじゃなかった。



彼氏にどう思われても気にしなかったし、会話が続かなくても苦痛に感じることはなかった。


それなのに蓮さんに対しては全く反対に気になって仕方がない。


何を考えてるの?どんな趣味があるの?音楽はどんなのを聴くの?


……私のこと、どう思ってるの……?



そんなの聞いたら『重たい女』だって言われそうで、聞きたいのに言い出せない。


相手を意識しだしたら、こんなに臆病になるなんて知らなかった。


映画館で手を繋がれた時、緊張したけど嬉しくて。


手のひらから伝わる熱が、私の体を熱くしてた。



知りたい、もっと蓮さんのこと。



もう少しだけ一緒にいたい。


月が見守る、この夜に。







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