音匣マリア
蓮によく似て50代でもカッコいい、とある大手企業のお偉いさんのお父さん。

そしてお母さんはまるでモデルのような美人さん。ブランドショップにお勤めとの事。美魔女ってこういう人の事を言うんだろうな、って感じる。




「いきなり何を言い出すかと思えば……」


お父さんが呆れたような声を出した。


この場合、お父さんのお眼鏡には叶わなかったって事なのかな?なんて悩んでいると、蓮のお母さんがクスクス笑ってお父さんを宥めた。


伊織さんも同席していて、お父さんと私をみてニコニコしている。



「そんな言い方したら、菜月ちゃんが心配するでしょ?大丈夫よ、菜月ちゃんなら。私と伊織が菜月ちゃんの味方だからね」

「そうだよー。蓮に何かされたら私に言ってね。でも、まさか蓮が菜月と付き合うなんてねぇ」


ニコニコからニヤリに笑い方を変えた伊織さんが蓮の方を見ている。


「うっせ。もう今日は良いだろ。今から菜月を送ってく」


無理矢理私の腕を引っ張って立たせようとする蓮に、お父さんが「もっとゆっくりしていけよ。菜月ちゃんと話したいんだけど?」などと言っていた。


「ちゃん付けしないでくんね?」

あからさまに嫌そうな顔をした蓮は、お父さんを見もしないで居間から出てしまった。




前に蓮は『お父さんの事が苦手だ』って言ってたけど、蓮とお父さんは何となく性格も似てるみたいだ。


同類で反発しあっているような、そんな雰囲気。


玄関まで送り届けてくれたお母さんが、こっそり私に耳打ちした。



「蓮がいない時でも遊びに来てね。菜月ちゃんなら大歓迎だから」


嬉しくて、こくりと頷く私に蓮のお母さんは優しく微笑んでくれる。


私、蓮の彼女だって認めて貰えたのかな?



それだけで心がほっこりして、舞い上がりそうになっちゃうよ。




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