音匣マリア
お互いの家族や交友関係を知った事で、私と蓮はより親密な関係を築いていけてるような気がする。


瀬名さんやヨッシー、伊織さんも蓮の事をよく教えてくれた。


蓮がどんな風に考えたり行動したりするのか、皆からそんな事を教えて貰うと蓮の存在が近くに感じられる。


自惚れても良いのかな?


私が蓮の一番だって。










―――蓮と付き合いだしてから、もう半年が経った。



季節は春から秋へと移ろいつつある。



夏には夏祭りや海にも行ったし、今度は紅葉狩りで泊りのプチ旅行を計画中だ。



伊織さんとは今まで以上に連絡を取り合っていて、それにヨッシーからもたまにメールが来る。その大半が、兄貴の飲み代が溜まってるって迷惑メールだったけど。


その兄貴も蓮の事を気に入ったらしく、今ではヨッシーの店に行くより蓮の店に行く方が多いみたいだ。


……私でも毎日は行けないのにな。



そう、私は仕事が終わると蓮の店にも行くけど、その次の日は店には行かず、蓮の部屋に行って夕食や朝食を作って置いておく。

1日交代で店とマンションを行ったり来たりしているんだ。


私の仕事が終わって蓮のマンションにつく頃には、当の蓮はすでに出勤してるから会えず終いでその日は少し寂しいけんだけどね。


でも、これはこれで楽しい。


蓮の為に規則正しい食生活を…って考えて作ってる料理が、蓮の生活の中にも当たり前のように日常化してくれていってる事。


それって、私の存在も、蓮の中に入り込んでるって事なのかな?


実際、もっと二人でいたいとか最初の頃はそればっかり考えてたけど、今は私がやってることが蓮の生活の《日常》に……つまり、この部屋で私がやってる家事が、蓮の生活には当たり前になってる事が嬉しい。


だってね、それで蓮が喜んでくれるから。


「もう同居しねぇ?」って、蓮はいつもそれを言う。


私もそうしたいけど、うちの両親はまだそこまでは許してくれなさそうだから、素直に「うん」とは言えないでいる。


同居したいんだけどな、本当は私だって。



そんな悩みに頭を抱えながら、今日も蓮の部屋で私は一人料理の準備に追われていた。


一人じゃ寂しいから、iPodで音楽を聴きながら。


今日のメニューは、晩ご飯用に栗おこわと秋刀魚のフライ。それにチコリのサラダ。


朝食用はフレンチトーストに、ミックスジュース。蓮は朝は特に胃が弱ってるから、お粥とか柔らかいものを食べたがる。








栗の渋皮を剥き終わった時、その音がけたたましく室内に響いた………。








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