それだけ ~先生が好き~


女子が走り去った後の砂浜は驚くほど静か。


男子ももう準備を始めてるようで、砂浜を走り回ってる。



調子に乗って海に入った城田を先生が怒ってるのが見える。



「ばーか!!入るなって言われただろ!」


「ははは、冷てーなー、海水」



先生はもう一度「ばか!」って言って城田の頭を叩いた。



いーなぁ。



私も先生のとこ行って話したいよ。


その願いは、叶えられそうにないけど。


こんな状態じゃ、先生に風邪うつしちゃうし・・・



じっと見つめることだけは、いいよね。




「おい、今井見学?大丈夫かよ」


先生に早く拭けと言われて、タオルを取りに来たらしい城田。



「うん・・・昨日も学校休んじゃったし、出たかったけど」


「寒気とか、平気?なんなら俺のジャージはおれよ」



大丈夫だよ、と言う間もなく城田は私にジャージをかぶせた。


寒気は確かにするけど・・・。


こんなに暑いから平気なのにな。


でも嬉しい。


城田の優しさが身にしみる。



「見とけよ!俺一位でゴールすっから!!」



自信満々の笑みでスタートラインに走って行った。




今度は「遅い!!」って先生に怒られてる。




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