それだけ ~先生が好き~
この時間が出来るだけゆっくり流れてほしいと思った。
目の前で、みんなに話をしながら解答用紙を一番前の席の子に渡す先生を目で追う。
小声で「まだ配らないで」なんて、言うんだよ。
一番前の席の子がうらやましい。
「なんか、同じ階なのに授業しないの、3組だけだよな~。みんな久しぶりな感じだよなぁ・・・」
教卓に座って授業する先生を思い出す。
私、先生の保健も大好きだった。
こうしてると、やっぱり先生のクラスに・・・なりたかったなぁ。
わがままだけど。
「これ終わったら、もうすぐ修学旅行だからな!あと1時間の辛抱です。先生達は・・・これからが勝負だよ。お前ら問題起こすなよ~、3組は大丈夫か」
みんなの前で、はははって笑う顔も、久しぶり。
「あ、もうすぐ始まるな。では、静かにして、心の準備してください」
腕時計を見て、みんなの顔を見回す先生。
目が合いそうになって・・・私は下を向いた。
目を見たら、きっと涙が止まらなくなっていただろうから。
気持ちがあふれてしまいそうだから。
私は、配られた解答用紙を見ているフリをする。
キーンコーン・・・
「じゃ、始めてください」
先生
先生
心が、先生を呼ぶ。
その声を求めてる。