† Lの呪縛 †
初めてオリヴィアと会った日に、オリヴィアが普通の人ではない事は分かっていた。


普通の人間はヒューイに話しかけるなど絶対にしない。


人間の瞳にはヒューイは映らないから。


ヒューイは人間の生年月日と歳を見る事が出来る。


オリヴィアの歳を見て目を疑ったが、何時見ても変わる事はなかった。



「彼女はとても可哀想なんです……」

「何故そう思うの?」

「普通の人間とは時間の流れが違うんです……人と呼ぶにはあまりにも長い時間を生きなければなりません。 僕なら同じ時を過ごせるのにって思うのに、ここへ連れてくる事も叶わない……」



生きた人間はハデスの治める冥界へは、足を踏み入れる事は許されない。


仮に足を踏み入れられたとしても、闇の空気は人間の身体には強すぎて、直ぐに死んでしまう。


ここは死者の魂を扱う場所だから。



「その少女に恋をしたのね」

「……恋? そう、なのかな……よく分かりません」



ペルセポネは外に向けていた視線をヒューイにずらし、微笑んだ。



「その想いを大切になさい。 たとえ相手が誰であろうと、素晴らしい気持ちである事に変わりはないのだから」



ヒューイは目を伏せ、頬を緩ませた。


モヤモヤしていた気持ちが少しずつ晴れていく。



「ペルセポネ様、ありがとうございます」



ペルセポネは自分よりも背の高いヒューイの頭をそっと撫で、再び外へと視線を向けた。





< 113 / 260 >

この作品をシェア

pagetop