† Lの呪縛 †
オリヴィアがレッドフォード伯爵家の養子になって、二年という歳月が過ぎた。


レッドフォード伯爵も伯爵夫人も、オリヴィアの事を本当の娘の様に可愛がっている。


ノエルもオリヴィアのことは大切な妹だと思っている。


だが、その感情も今や危うくなりつつある。


透き通る様な肌に、花弁の様に愛らしいふっくらした小さな唇。


くるんっと上向きにカールした上睫毛、こぼれ落ちそうな程大きな瞳。


胸下まで伸びた艶やかなブロンドヘアー……それらは世の男を魅了するには十分すぎる程美しい。


そして、女たちはオリヴィアの美貌に嫉妬心が芽生える者も少なくない。



「お茶にしよう」

「うん、そうだね」



オリヴィアは細くすらっとした白魚の様な手で広げている分厚い本を閉じた。


立ち上がり本を元の場所にしまうと、ノエルがオリヴィアの腰に手を当てエスコートする様に二人でドアへと向かった。


オリヴィアが愛しくて堪らない。


その感情が表に出てしまわぬ様、優しく頼りになる兄を演じている。


これは決して両親にもオリヴィアにも……他の誰にも知られてはならない。


そう思いながらも、隠し続ける自信がなかった。


ノエルにとって、オリヴィアが来てからの生活は苦しくも幸せな日々である事は確かだった。





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