teddy bear
しばらく歩いたところにベンチがあり、あたし達はそこに座った。
「…もうすぐクリスマスだねー」
「もうすぐって、まだ11月はじめだろ」
透也は、ははって笑った。
白くて小さな雲が、ひんやりとした空気に溶けて消えていく。
「や、でもさ、楽しみじゃん! クリスマス」
「んー、まぁ」
空を見上げる。
もう、冬の匂いがする。
不意に、透也が言った。
「…華はさ、サンタクロースって、信じる?」
「え?」
透也を見ると、意外にも真剣な表情をしている。
「…周りの友達はみんな、親がサンタクロースだって言ったりしてるけど……あたしは、違うと思う」
「なんで?」
「昔ね、両親がクリスマスの日仕事でいなかったことがあるの。でも次の日目が覚めたら、ちゃんと枕元にプレゼント置いてあったの」
それまでは、周りが『サンタクロースは親だ』なんて言っていたから、あたしもそう思っていたけど…。
それをきっかけに、あたしはサンタクロースの存在を信じるようになった。