TABOO~懐剣を外して~
そして舞は、たちまち才女として名を馳せた。
そのおかげもあって真之介とは学問を通して親しくなった。

だが、評判の才女を嫁に欲しいという家が現れた。舞に縁談が届き始めたのだ。
どんなに焦がれたところで真之介とは一緒になれない。
(ならば私を必要としてくれる相手に添い遂げよう)
舞はそう決めて、縁談を受けた。
そして、藩校もやめた。
学問をやめた自分を、真之介に見られたくなかった。
何より真之介に逢うと、封じた恋心が暴れると思った。

なのに、結納も済ませて祝言を控えた今、ここへ来てしまった。
「舞?」
掛けられた声に振り返ることは、できない。
「祝言がきまったとか」
「はい。舞は、真之介さまが好きでした。でも……」
真之介が、ぐいっと舞を抱き寄せた。
「なりませぬ!」
とっさに懐剣に手をやったが、その手を真之介におさえられた。
「……祝言の日、そなたを奪いに行く」
震える舞の手から懐剣が滑り落ち、そのまま真之介の背をぎゅっとつかんだ。
「共に、地獄へ落ちよう」
「……はい、どこまでも参ります」


【了】
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