天使の歌

啜り泣きながら目を開けると、灰色の床が見えた。

どちらが現実か解らなくて、セティは必死に、記憶を探り。

ディリー達に捕まってしまった事を、思い出した。

見慣れた床、
見慣れた壁、
見慣れた天井、
見慣れた鉄格子。

ゆっくり身を起こしてみると、足の方で、じゃらっと金属音が した。

見れば、両足首には、重そうな足枷が付いている。

それ等は太い鎖で繋がれ、壁に埋め込められていた。

「…………。」

セティは暫く それを見つめ、溜め息を つきながら再び横たわった。

血を沢山 吐いた所為か頭痛がし、頭が くらくらしている。

冷たい床に頬を付け、セティは目を閉じた。

(……ああ……。)

帰りたくなかった場所に、帰って来てしまった。

6歳から10歳迄の4年間――暮らして来た独房。

(……嫌だ。)

セティは自分の肩を抱き、震えを押さえようと した。

――怖い。

すんっと鼻を啜った その時。

こつこつと言う足音と共に、誰かが近付いて来た。

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