天使の歌

足音は、セティが居る独房の前で止まり、ガチャガチャと、鍵を開ける音が聞こえた。

キィッと扉が開き、意識が無い振りを していても仕方が無いと、セティは目を開ける。

入って来たのは、スティだった。

スティは無表情でセティの前に立ち、口を開いた。

「あの人間との混血(ハーフ)は何処に行った。」

「…………。」

無言でスティを睨むと、彼はセティの腹を、強い力で蹴った。

「がっ……。」

セティは堪らず、躰を丸めて むせた。

「あの餓鬼は何処だ。」

「……知……らない……。」

咳き込みながら、セティは声を絞り出した。

キュティが何処に行ったか知らないのは、事実だ。

しかしスティは、無防備なセティの腹を、何度も、何度も蹴った。

我慢 出来なくなり、セティは胃液を吐いてしまう。

「きったねェな。」

それを見て、スティは顔を顰めた。

「強情な奴だ。まぁ、良いさ。ディリー達が、見付けるだろう。」

そう言って独房を出て行こうと したスティのズボンの裾を、セティは掴んだ。

「っ!」

スティは驚いて振り返ると、セティの手を、踏み付けた。

「いっ……。」

セティは苦痛に顔を歪める。

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