天使の歌
<貴方は其処で、悪魔の力を暴走させてしまう。
そうすると、3界が滅んでしまうんだって。>
キュティの声を、何処か他人事のように ぼんやりと聴きながら、セティは壁に凭れた。
<私が、必ず貴方を助けるから!!>
(……来なくて、良いよ……。)
セティは、目を閉じる。
(もう……疲れたんだ。)
一生懸命、一生懸命、生きて来たのに。
罵られて、蔑まれて、迫害されて、嬲られて。
――俺なんて もう、必要無いんだよ……。
光の神霊(みたま)が最後の言葉を伝えて行く。
<私は、貴方が好きです。
一緒に逃げて、一緒に生きよう。>
その声に、セティは目を見開いた。
(……何故……?)
俺が逃げ続けた所為で、君の村は滅ぼされ、君も追われる身となった。
優しさに触れるのが怖くて、笑顔を創れなかった。
悪魔の力を暴走させて、君を殺し掛けた。
――こんな俺を、好き、だって?
「……ぅ……。」
気付けば、セティの瞳からは、涙が ぼろぼろと溢れ出していた。
漏れる嗚咽を、必死に堪え、膝に顔を埋める。