天使の歌

「居たぞ!!」

聞き慣れた声が直ぐ後ろで聞こえて、俺は慌てて振り返った。

いつの間にかリーは、俺が隠れていた茂みを回り込んで、俺の後ろで仁王立ちしていた。

リーの言葉に、取り巻き4人が、わらわらと集まって来る。

砂糖に集る蟻みてェ。

思わず そう思って、俺は慌てて気を引き締めた。

そんな事 考えてる場合じゃない。

四方を ぐるっと囲まれてしまった。

これは……ヤバい。

「逃げんなよー、折角ぼっちの お前と遊んでやるって言ってんのに。」

「そいつは どうも。でも俺は、木の棒 振り回して ちゃんばら やるよりも、木陰で読書してる方が、楽しいんだ。」

出来るだけ ゆっくり答えて、こっそり辺りを見渡す。

……駄目だ。

完全に、逃げ道が無い。

「うるっせェな。遊んでやるって言ってんの!」

リーは簡単にキレると、俺の顔に向かって棒を振る。

父親に教わったように、見極めて、冷静に躱す。

しかし、取り巻き4人も攻撃して来た為に、全部を見極める事は出来ず、リーの棒は、あっさり俺の頭を殴った。

「っ!!」

歯を喰い縛って、悲鳴を押さえる。

声を出したら、負けだ。

リー達を、煽る事に なる。

< 144 / 237 >

この作品をシェア

pagetop