天使の歌

「よっしゃ!やれっ!」

1度 殴られると、集中力が途切れ、避けられなくなった。

(痛いって……もう……。)

必死に顔を庇いながら、俺は5人の隙を捜す。

――今だ。

右に誰も居なくなった その瞬間。

俺は地を蹴って翼を広げると、リー達の輪の中から逃げ出した。

「あっ、待て!!」

(誰が待つもんか!)

銀髪を靡かせて、晴れた空を舞う。

そのまま、家の方に向かって翔んだ。

暫くして、地に降り立ち、歩き始める。

(いってェ……。)

殴られた躰が、あちこち痛む。

(あざに なるかなぁ……。)

溜め息を つく。

家に着くと、両親は帰宅していた。

悪魔の父さんは、仕事なんか無いから いつも家に居るけど、母さんは毎日 働いている。

「……只今。」

ぼそっと呟くと、両親は俺の姿を見て、目を見開いた。

「セティ、どうしたの?」

「別に。また虐められただけ。」

「今回は いつもより酷いじゃない。」

母さんは濡らしたタオルで、俺の顔を拭ってくれた。

「木の棒で、殴られたから……。」

「セティ。避ける方法、教えただろう?」

父さんは、長い銀髪を弄びながら、微笑した。

「最初は避けれたけど……相手は5人だもん。」

「人数は関係無い。お前は半分 悪魔の血が入ってるんだから、其処いらの天使より強い筈だ。」

そう言う父さんに、わざと膨れっ面を してみると、笑われた。

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