天使の歌

その場に残された桜と樹は、キュティの姿が見えなくなった途端に、溜め息を ついた。

「大人だなぁ。」

樹の苦笑に、桜も苦笑し返した。

「正に苦労人って感じ。凄い分析力だわ。……信頼して貰えば何とか なるって思ったけど、キュティちゃんにしか心を許してない あの感じ……苦手だわ。」

「悪魔、だもんなぁ。」

人界でも悪魔は、天界 同様、邪悪な存在だった。

桜と樹にも、少しだけ恐怖は在る。

しかし、大事な妹――キュティが愛した男なら、放っておけない。

「……忌み子、か……。」

風に靡く髪を押さえて、桜は呟く。

「何処にでも在るのね。この言葉は……。」

「あぁ。」

桜の言葉に樹は頷き。

2人は、キュティとセティが歩いて行った方角に、目を向けた。

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