天使の歌

それから1週間、キュティは、神崎家が管理している神社の裏に在る桜達の自宅の一室で、ぼんやりと過ごした。

――セティが居ない世界。

私は此処で生きて行く。

独りで。

勿論、桜と樹がキュティを妹として扱ってくれる事は解っている。

1人ではない。

でも、独りなのだ。



神崎家の大黒柱――桜と樹の父親である草司(そうじ)さんには、ちゃんと挨拶を したし、食欲は無かったが、毎日3食、きちんと食べたし、寝れなかったが、横に なって目を瞑った。

セティの後を追って、死ぬ事も考えた。

でも。

天界で最後に見た、セティの微笑み。

(きっと、セティは……。)

私に、生きて欲しいって思ったよね……。

セティから送られた神霊(みたま)は、とっても暖かかったもん。

(私、頑張るから。)

見ててね、セティ。

ある朝、キュティは樹の元を訪れた。

元気に なったのかと尋ねて来る兄の瞳を真っ直ぐに見て。

決意した事を、告げた。

「お兄ちゃん、私、頑張って人界で生きます。だから……。」

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