天使の歌
誰かが お店に入って来たのに気付いて、キュティは いらっしゃいませ!と、顔を出入口へ向けた。
入って来た お客は、今 作り終えた花束を注文した女性だった。
「あ、丁度 良かった。今 作り終わったんですよ。」
そう言って花束を見せると、女性は嬉しそうに笑った。
「まぁ綺麗。有り難う。」
代金を払って、花束を受け取って、女性は店内を見渡した。
「……紅夜(こうや)〜?」
「誰か お捜しですか?」
キュティが訊くと、女性は頷いた。
「息子が先に来ている筈なんですけど……。」
「捜して来ますね。」
キュティは そう言って、広い店内を歩き始めた。
百合と躑躅(つつじ)の間に居る、金髪の少年を見付け、ほっと息を吐くと、キュティは彼に声を掛けた。
「紅夜君?お母さんが捜してるよ?」
「っ!」
いきなり声を掛けられて驚いたのだろう。
金髪の少年の肩が ぴくりと動いて。
振り返った彼の姿を見て、キュティは息を飲んだ。