天使の歌
村に澄んだ歌声が響く。
歌っているのは――キュティだった。
高く、高く、歌は響く。
それを聴いている者は、誰も居なかった。
「此処に居たんだ。」
話し掛けられて、キュティは歌を止めた。
振り返ると、ネスティが居た。
「ネスティ。」
「捜したよ。」
そう言って彼は、キュティの隣迄 歩を進めた。
「キュティは ほんと、歌うの好きだね。」
「私、歌う事しか出来ないから。」
キュティは哀しそうに微笑む。
「…………。」
その笑顔を見つめて、少し躊躇った後、ネスティは口を開く。
「あのさ……キュティ。」
その時。
辺りにドンッと言う音が轟いた。
「何!?」
キュティとネスティは村の中心部を振り返った。
煙が上がっている。
そして其処を中心に、悲鳴を上げながら散り散りになって逃げて来る、村人達の姿が見えた。
「僕が見て来る!キュティは此処に居て!!」
ネスティは叫ぶと、背の翼を広げて、煙が上がっている場所へ翔び立った。
「ネスティ!!」
キュティは慌ててネスティに駆け寄ったが、彼は既に空を舞っていた。
(……あぁ……。)
キュティの顔が、哀しげに歪む。
……私にも、2つの翼が在れば……。