天使の歌

「……上手く行ったみたいね。」

気絶したセティを仰向けに してやりながら、ディリーは ひっそりと呟いた。

ディリーは、セティの躰の中の、天使と悪魔の血が微妙な均衡を保っている事を知っていた。

だから、天使の神力を、セティの体内に送り、均衡を崩そうと したのだ。

ディリーはセティの顔を見つめる。

20歳そこそこに見えた彼は、寝顔を見ると、15、6歳に見える。

髪と同じ色の長い銀の睫毛。白い肌。

(……こんなに綺麗なのに……忌み子、か。)

忌み子――それは、穢れた存在。

セティのような、異種との混血(ハーフ)だったり、生まれ付き翼が無かったり、神力が使えなかったり。

そう言う者は、穢れた存在――忌み子として、差別され、迫害される。

(あたしだって こんな事したくないのよ?)

ディリーの胸に浮かぶのは、セティへの同情と。

それより大きな、忠誠心。

(あたしは、あの方の為に生きると決めたの。)

だから、悪く思わないでね。

ディリーは笑う。

――全ては、スティ様の為に――。

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