産まれる。

天使と悪魔




きっと、ボクが産まれる世界には

沢山の、素晴らしい輝きが待っているに違いない。





パパとママがボクを今か今かと待ち構えているに違いない。


それを考えるだけで、僕の心臓はドクンドクンと動いた。





時々怖いママは、パパの前ではとても優しいママ。


ボクは知ってるよ、ママは凄く辛くて苦しくて

一生懸命なんだって、わかってるからね。






前にママが、読んでくれたお話がある。


タイトルは忘れてしまったけれど、凄く面白いお話。








悪魔さんと天使さんがいてね、

悪魔さんは天使さんととても仲が良くて、一番のお友達だった。


けど、悪魔さんは毎日悪いことをして回っていた。


他のお友達の物を勝手に盗んだり、窓ガラスを割ったり

平気で人間を殺したり


そして、挙句の果てには自分がやった悪事を

天使さんに擦り付けたのだ。



だけど天使さんは怒らなかった。

悪魔さんを攻めなかったし、喧嘩もしなかったんだ。



それを見かねた神様が


悪魔さんを遠い遠い場所へ飛ばしてしまうんだけど

それを知った天使さんは神様に激怒した。



「悪魔さんは悪いことを沢山やってしまったかもしれない。

でもね、悪人ではないんだ。

昔は凄く優しくは・・・

昔は・・・・昔は・・・・」


しかし天使の言葉を聞いた神様は

天使にこんな言葉をかけた。



「昔と今では、変わることもある。


どんなに昔は良い行いをしたとしても


現在に至る彼の行いは良いものとは言いがたい。


天使よ、今を見よ。今の悪魔を見よ。


今を生きる者たちを見よ。」




こうして、天使さんは今の悪魔さんを受け入れ

彼の存在を忘れることにした。


天使さんは辛くはなかった、むしろ清々しい気持ちで

胸がいっぱいになった。




今を生きることを決意した天使さんは


沢山の人の今を、幸せにしてあげたそうだ。








ママは天使さんなんだ。



すごく、優しい天使さん。



ボクはわかっているからね、ママ









きっと悪魔さんは、今の天使さんを見たら


悪いことをしたって思うかもしれない。



絶対そうだよ。




ボクはまだ完成しきっていない顔を
ほころばせた。



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