産まれる。

私は天使




山本 由里子は

旦那の浮気相手の女だった。


旦那の行きつけのスナックで働いてる女で

前に彼の携帯を覗き見たときに浮気を発覚した。



この女は、なんとも金に苦労していない女だったみたいだ。



今まで付き合った男たちに貢がせ

その金でブランド物のバッグや時計

更にはエステにまで通っていたそうだ。


綺麗に染められた長い金髪の髪

濃い今風の化粧、綺麗なネイルの施された爪

体つき華奢だが、豊満な胸。



殺意とは、知らぬうちに自分の中で生まれるものだと


知ってしまった。





私は、この女の事を調べ


今日殺してしまった。




鞄の中に忍ばせていた包丁で

めった刺しにしたのだ。






その日の私は

何年かぶりにお洒落をした。



化粧もして、髪も整え

香水も付けた。



彼女に負けないくらい、美しく身にまとい


彼女の家に向かって。





最初から殺すつもりだった。


覚悟はしていたけれど、いざ殺害してしまうと

罪悪感が私を襲う。





すぐに警察が来て

私を逮捕するかもしれない。


でも、その前に 私にはやらなければならないことがあった。








お腹の中の子供に障害があると知ったとき

私は絶望し、更にそんな子供を受け入れない旦那に失望した。

落ちるとこまで落ちたな、なんて思っていたけれど


私の子供に変わりはない。



全力で、私の愛を注いで育てたい

そう思うと、障害があるなんて気にならなくなった。




私は耐えてきた、これまで苦しいことや悲しいことは慣れている。


「ママね、強くなったのよ」



そう、強くなったの。



「はやく、産まれておいで

私が、私だけが愛してあげるから


だから、今のママを許してね」







本当はね

天使さんと悪魔さんの結末は


こうなのよ。










天使は



最後に





悪魔を







「殺したの」






私は、血のついた包丁と返り血を浴びた顔や手を

持参していたタオルで拭い


自宅へ向かった。







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