ナピュレの恋【完】

夜景を見たら、一瞬でも忘れられると思った…。


だけどそれは、本当に一瞬で…声を押し殺して泣くことしかできなかった。


それでも、一瞬でも忘れられるなら…と、今日も来てしまった。


でもそこに、裕也が来るなんて思わなかった…。


あたしを探しに来てくれたなんて…。


会社を辞める時、花音には言わなくても貴子には言わなくちゃいけなくて…。


あたしは全て打ち明けたんだ。


当然貴子は。


「そんな元カノのことなんか気にしなくていいんじゃないの?今の彼女は、なつこなんだし」


そう言ってくれたんだけど、意志が変わらないあたしに。


「行く場所だけ教えときなさい」


そう言って、もう何も言わないでいてくれた。


そんな貴子に感謝した。


自分で決めたことなのに裕也に後ろから抱きしめられ、声を掛けられた時、ものすごく嬉しかった…。


あたしは、この日を待ってたんじゃないかって。


いつか裕也が迎えに来てくれるんじゃないかって…。


そう思えてしまうほどだった。
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