ナピュレの恋【完】
「お客様のお名前伺ってもよろしいですか…?」


それは突然のことだった。


「は?」


他の客のことを名前で呼んでいるのは知っていた。


けど、それは自分から呼んでと言ってるものだと思っていた。


だから自分はずっと“お客様”だと思っていたし、それで良いと思っていた。


「ダメ…ですか?」


なに、この子犬のような目はっ!!


これで、あたしがダメと言ったら泣き出すんじゃないだろうか。


だから


「宮川…なつこ」


気付けばそう答えていた。


「なつこさんか。素敵な名前ですね」


そう言って裕也は笑った。
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