紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
コートニーは懐かしそうに言った。
田舎だったけど、貧乏だったけど、何も不自由はなかった。
普通に学校へ行って、普通に友達と遊んだ。
周りの人たちは、みんな優しかった。
「おばあさまはある日こっそり、私がもう一つの王族の血を受け継いでいることを教えてくれた。
黒魔法師と白魔法師の過去も。
怖かった。その日は、眠れなかったわ」
コートニーはその胸元から、ペンタグラムを取り出す。
「これはそのときもらったの。
王族の印なんですって。
私自身は普通の人との混血だし、大した力はないんだけど、このペンタグラムは先祖代々受け継がれてきた、大きな力が宿ってる……って噂」
「それも、カートとナンシーはほしいわけやな」
「そうよ。
12歳のときだった。彼らは突然私の家にやってきて、これと私をさらって監禁したの」
淡々と話しているが、当時はよほど恐ろしかっただろう。
幼い彼女を想像し、胸が痛くなる。
「よく取り上げられんかったな」
「もちろん、取り上げられたわよ。
でも、カートが女友達だか恋人だかを連れ込んで色々してるとき、ナンシーも留守だったときがあったの。
そのすきに、彼のコートから奪って、逃げてきたのよ」
カートは何人も恋人がいるの、とコートニーは付け足した。
たしかに、黒魔術とかなんとか言わなければ、彼は本当の王族のよう。
美しいその容姿に魅せられる女の子は、後を絶たないだろう。
「僕も自分はイケてると思うけど、カートにはかなわんなあ」
オーランドは苦笑を洩らした。