紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


過去にこの部屋で受けた痛みが、オーランドの中によみがえる。


あんな思いを、コートニーに味わわせるわけにはいかない。絶対に。


しかし、魔力の鎖は引っ張ってもびくともしなかった。


それはオーランドの力を封印し、体力を奪っていく。


「どうすれば……」


倦怠感のなか、オーランドは必至で頭を働かせる。


すると、どこからか足音が近づいてくるのが聞こえた。


誰だろう。


静かにしていると、足音は扉の前で止まった。


「オーランド……俺だ」


「クライド?」


聞き覚えのある声に、オーランドは扉の近くまで移動する。


「よく聞け。時間がない。

あの女の処刑が決まった」


処刑?

オーランドは耳を疑う。


いったい、自分たちが捕われてからどれくらいの時間がたっているのだろう。


「騎士団が、コートニーを処刑すると?」


「そういうことだ。

黒魔法師の王族の血筋は、生かしてはおけない」


「そんな……コートニーが、何をしたっちゅうねん!」


「生きていること自体が罪なんだよ、彼女は」


そんな。そんなバカなことがあるか。


コートニーはただ、白魔法師と黒魔法師のどうでもいい争いに巻き込まれただけじゃないか。


自分の正体がなんであろうと、受け入れてくれた。


そんな優しい彼女が生きていること自体が罪だと言うのなら、この世界の全員が罪人じゃないか。


怒りに任せて扉を叩くと、冷静なクライドの声が聞こえた。


「彼女のペンタグラムは、団長が没収した。

もう彼女を守るものは、何もない」


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